【ケヤキとは】

・北海道西南部、本州、四国及び九州の山地や丘陵に自生するニレ科の落葉高木。新緑、紅葉のみならず箒状の樹形があらわになる冬季の佇まいも美しく、街路樹や屋敷の防風林として使われる。日本を代表する巨木の一つだが、朝鮮半島や中国にも自生する。

 

・日本においては特に関東地方の土質(関東ローム層)に馴染み、東京都府中市の大國魂神社(馬場大門)や表参道の並木などが名所として知られる。このためケヤキは「武蔵野」のイメージが強いが、仙台市にある青葉通りの並木で知られる宮城県や福島県の県木でもある。

 

・関東近郊に立派なケヤキが多いのは、徳川幕府がその植栽を奨励したことにちなむ。江戸時代には橋げたや船、海苔を養殖する粗朶(そだ)作りに使われ、その後も立派なケヤキのある家は格式が高いとされた。通常は樹高25m、直径2m程だが、大きな木では樹高30m、直径5mにもなり、天然記念物として保護される巨樹が各地にある。

 

・古代においては、強い木を意味する槻(ツキ)あるいは槻木(ツキノキ)と呼ばれていたが、16世紀頃から欅(ケヤキ)と表記されるようになった。ケヤキは「けやけき木」で、他の木より一際目立って樹形が端整であることや、木目が美しいことを意味する。ただし、中国語の「欅」はシナサワグルミを表す。

 

・ケヤキの材は乾燥させても寸法が狂いやすいが、長い時間寝かせれば落ち着く。耐久性や耐湿性が高いため、箪笥(仙台タンスなど)、和太鼓などの道具や楽器に使われるほか、京都の清水寺など名だたる神社仏閣の柱にも使われる。材に「玉杢」や「牡丹杢」と呼ばれる模様の入ったケヤキは特に価値が高く、お盆やお椀といった伝統工芸品に使われる。

 

・ケヤキは空へ向かって扇型に広がり、下枝(横枝)が少ないため、人が集う場所に木陰を作る木として使われる。葉は長さ3~7センチほどの細長い楕円形で先端が尖り、枝から互い違いに生じる。縁にはギザギザが目立ち、手で触れると表面はカサカサしている。秋にはオレンジから黄色に淡く色づいて美しい。

 

・ケヤキの開花は4~5月。サクラが咲く頃、芽出しと共に黄緑色の花を咲かせる。雌雄同株で花には雄花、雌花、そして両性花があるが、花や果実は高い場所にできるため観察しにくい。雄花は新枝の下部に複数咲くためやや目立つが、雌花と両性花は上部の葉の脇にひっそりと咲く。

 

・花の後にできる果実は直径5ミリほどの歪な球形で角が二つある。果実が熟すのは10月頃で、カワラヒワやアトリなどの野鳥はこれを採食するが、紅葉した葉と同じような色になるため分かりにくい。果実ができるだけ遠くへ拡散されるよう、風が吹けば枝葉ごと落下するため、路上で観察できることがある。

 

・若いケヤキの樹皮は灰褐色かつ平滑あり特徴に乏しいが、成木になると画像のように樹皮が鱗状に剥離し、晴れた日には神々しく輝く。ただし、さらに樹齢を重ねて老木になると鱗状の樹皮は剥がれ落ちていく。

 

【ケヤキの育て方のポイント】

・日向を好む代表的な樹種であり、日陰では健全に育たない。

 

・剪定にはかなり強いが、大木になるため相当なスペースが必要。現代の一般的な家庭には不向き。強剪定を行うとシダレヤナギのような枝葉が多数生じ、樹形が崩れていく。

 

・肥沃な深層土を好み、ケヤキ自体も大量の葉を落として土地を肥やす。その反面、掃除がやや面倒。街路樹として都会でも使われるが、大気汚染に耐えるため年に何度も落葉することがある。

 

・環境が良ければ綺麗に紅葉するが、乾燥に弱く、梅雨に雨が少なくて夏の暑さが厳しいと、早期に黄葉、落葉することがある。

 

・基本的には病害虫に強いが、枝葉が密生して風通しが悪くなるとアブラムシやイラガ、クスサン、マイマイガなど蛾の幼虫の被害に遭うこともある。

 

・近年はクワカミキリやキボシカミキリなどのカミキリムシ類にも食害される例が増えている。枝に産み付けられた卵からかえった幼虫は材を食べながら幹の方へ降り、樹皮に穴を空けてオガ屑のような糞と木屑を出すため、早期に捕殺した方がよい。

 

【ケヤキの品種】

・ケヤキ属の樹木は本種のみだが、葉に模様が入る「斑入りケヤキ」や、背丈が低めで枝幅が広がりにくい「武蔵野ケヤキ(むさしの1号、2号)」、枝が垂れる「シダレケヤキ」など6~7種の変種がある。