目次

  1. クラウドワークスに動画依頼を出した日
  2. 「自分で作ればタダでいいじゃん」という声
  3. 頭が空っぽになった夕方
  4. 手放す勇気と、委ねること
  5. ふたたび灯る、小さな火

1. クラウドワークスに動画依頼を出した日

今日、クラウドワークスに「ともペン工房の紹介動画を作ってください」という依頼を出した。
屋久杉や樫、メンピサン、貝塚伊吹――
私が手で削り、磨いてきた木たちの物語を、
動画という形で伝えたくなったからだ。

構成台本も作り、依頼文も丁寧に整え、
女性のクリエイターさんにお願いできたら…と思いながら投稿ボタンを押した。
ひとつの夢が少しずつ形になっていくような、
そんな小さな高揚感があった。

けれどそのあと、ふと胸の奥から声が聞こえた。
「……でも、自分で作ればタダだし、いいじゃん?」

その声は、現実的でもあり、少し寂しさを帯びていた。
外注という“他者に任せる選択”が、
どこかで「自分の手を離すこと」に似ていたからだと思う。


2. 「自分で作ればタダでいいじゃん」という声

ハンドメイドをしていると、
“自分で全部できること”が、ある意味で誇りになる。
材料を選び、削り、磨き、撮り、書く。
そのすべてを一人でこなすことに、
「これが私の作品だ」という確信を感じてきた。

だから、「動画を外注する」という選択は、
少し勇気のいることだった。

他人の手を借りるのは、
怠けではないと分かっていても、
どこかで“自分の力が足りない証拠”のように感じてしまう。

でも、本当は違うのかもしれない。
作品を愛しているからこそ、
その魅力を“別の目線で見せてもらう”ことにも意味がある。

ただ、その理解と感情のあいだで、
私は少し揺れていた。


3. 頭が空っぽになった夕方

夕方、急に力が抜けた。
ふと、今まで何をしていたのか、少しわからなくなるほどに。
「木軸ペンって、なんだったっけ?」
そんな言葉が頭に浮かんで、少し怖くなるほどの空白。

でも、その空白は不思議なほど静かだった。
焦りも、恐れも、悲しみもなかった。
ただ「空」になっただけ。

思考が止まり、
意識がどこか遠くへ行ってしまったような感覚の中で、
私の心は、ようやく休みたかったのかもしれないと思った。

創ること。考えること。進めること。
そのどれもが、少しずつ積み重なって、
知らないうちに、心が疲れていたのだろう。


4. 手放す勇気と、委ねること

人に頼むということは、
「自分のやり方を手放す」ことでもある。
でも同時に、それは“委ねる”という信頼の表れでもある。

たとえば木を削るとき、
削りすぎない勇気が必要なように。
動画を誰かにお願いすることも、
自分の世界を広げるための小さな勇気なのかもしれない。

そして、その勇気は、
無理に湧かせるものではなく、
**「力が抜けた時に、自然と訪れるもの」**なのだと思う。

私が今日、意識を飛ばすほどに脱力したのは、
「もう、少し休んでいいよ」
という、内なる声だったのかもしれない。


5. ふたたび灯る、小さな火

夜が静かに降りてきた。
さっきまでの空白が、少しだけあたたかく感じる。
何も浮かばないことを責めず、
ただ、今の自分を見つめるだけの時間。

「誰かにお願いする」ことも、
「自分で作る」ことも、
どちらも“創造”の一部だと、ようやく分かってきた。

木軸ペンのように、
削られ、磨かれ、形を変えながら、
自分自身も少しずつ整えられていく。

外注か、自作か。
そんな二択を超えたところに、
本当の“ともペン工房”の物語がある気がする。

今日のこの静けさは、
きっとその新しい章の始まりだ。

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