ヒノキ科スギ属

北海道の南部以南の日本全土に分布

富士は日本一の山ですが、木の中では杉が日本一。杉は日本一樹高が高くなる木で、大きいものでは50m以上にもなります。しかも、杉は日本一長寿の木。樹齢2000~3000年の杉が日本各地にあります。さらに、日本でいちばん多く植えられている木もスギです。

杉は日本の国民的樹種

杉(スギ)は日本固有の針葉樹で、日本でも最も多く植林されている樹種です。本州以西(以南)に自生もしていますが、北海道南部では主に造林が行われています。これまではスギ科に分類されてきましたが、遺伝子の分析技術が進んだことにより、最近ではヒノキ科に分類されるようになりました。

スギは環境の適応性が広く、丈夫な樹種なので古くから日本各地で造林され、日本の人工林(約1000万ha)の中で、面積で約43%、蓄積で約57%を占めており、日本の植林樹種の中では、断然のトップを占めています。

材は一般に柔らかく曲げやすい性質を持っていますが、中には別樹種を思わせるほどの極めて固いスギ材もあります。建築材をはじめ、樽や桶、船など古くから幅広く利用されてきました。スギは日本の文化を育んできた、いわば「国民的樹種」といえるでしょう。

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杉は日本の固有種 1種1属の樹木

春日山 原始林の杉(奈良県)春日山 原始林の杉(奈良県)

富士山は日本の山ですが、スギも日本だけの木(日本の固有種)です。学名の「クリプトメリアヤポニカ(Cryptomeria japonica)」をみてもわかるように「ヤポニカ(japonica)」は「日本の~」という意味のラテン語です。また「クリプトメリア(Cryptomeria)は「隠れた財産」という意味です。つまり「隠された日本の財産」という意味なり、スギは、財産になるほど利用価値の高い日本固有の木といえるでしょう。

ヒマラヤスギ、レバノンスギなどのように「スギ」の名を持つ木がありますが、いずれも「マツ科」でスギとは縁が遠いものです。

広葉杉(コウヨウザン)広葉杉(コウヨウザン)

他にも、中国に広葉杉(コウヨウザン)というスギに似た木があります。この広葉杉は円錐形の樹形や樹皮は似ていますが、葉や球果も日本のスギのイメージとは違い、異国風の雰囲気を持っています。さらに属も違います。

スギは「1属1種の日本固有の木」なのです。

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スギは縄文時代より日本文化を支えてきた

三角錐の樹形が整然と並ぶ美しいスギ林三角錐の樹形が整然と並ぶ美しいスギ林

スギは日本で最も多く植林された木で、北海道の南部以南のほぼ日本全土にわたりスギ林が見られます。総人工林面積約1000万haのうち45%を占めており、建築材として広く利用されています。スギ林は、三角錐の樹形が整然と並んでおり、日本各地で美しい風景を形成しています。それらは戦後、先人たちが後世の人々のために、汗を流して植林した人工林(育成林)です。

縄文時代後期から弥生時代(4000年~2000年前)は「スギの時代」といわれるほど急激に分布を広げています。遺跡を調査すると埋没林や木材片としてスギが発見され、縄文時代早期より使われてきたことが知られています。鳥浜貝塚遺跡(福井県)の調査では、縄文時代に使われていた木材のうち、スギは20~30%、弥生時代には70~80%も使われていたことが推定されています。現代でも日本人の暮らしの中にスギは身近に見られ、家(建築材、梁や柱)や家具、彫刻、工芸、用具(樽・桶)、船、下駄なども、スギで作られているものが多くあります。

スギは日本人とともに歩み、日本の文化を支えてきた木といえるでしょう。